見せたい映画・・・

基本的には、人は自分の好きな映画を見ればよいと思う。

でも、「人にどうしても見させたい映画」というのが、やはりあるのだ。

君は、友達でも恋人でもよい、なんかの理由をつけて家に呼び出す。確信犯的ではないが、さりげなく、高圧的にならないように、DVDなりVHSを再生する。

酒でも飲みながら、あるいは世間話をしながら、その映画に注目しないか「してくれないか」神にでもすがりたい気持ちになる。

自分がその映画を見て変わったもの、それに気付いてくれないか、なんでもよい、なにか啓示的なものが相手に与えられないか。

 

大抵の場合、その試みは失敗する。友人だか恋人は、意味もない画像を素通りし、チャンネルを変えるか、消してしまうのだ。

 

「灰とダイアモンド」「太陽がいっぱい」「市民ケーン」「死刑台のエレベーター」・・・それらを彼らはいとも簡単に溝に捨て去るのだ。

 

「第3の男」を知る人は、もうあまり多くないだろう。

ATGの熱気はどこに行ったのだろう。実相寺昭雄、白黒の写経にヴィヴァルディを知る人は皆無だろう。

 

今、趣味に熱中するには状況が悪すぎる。かといって、素面で仕事なんかできやしない。

ここしばらくは、そういった「映画」(カッコつきの映画)について語ることにしようと思う。